ふたばクリニック 内科・小児科

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ホーム > コラム > インフルエンザの陰性証明

コラム

インフルエンザの陰性証明

インフルエンザ流行時期に発熱を認めた場合、インフルエンザか どうかが気になります。

インフルエンザの検査は、治療のために大切な検査です。医師にとっては、陽性判定が重要なのですが、患者さんの立場として、陰性判定が重要な場合もあります。

ただし、結果が陰性であった場合、その解釈は微妙なニュアンスを含みます。この点に関して、コラムを設けました。

  • 陰性の証明は難しい
  • 検査陰性であっても、インフルエンザを否定したことにはならない
  • いい加減さの定数化

 

陰性の証明は難しい

 たとえ話です。

”東京湾で釣りをして、スズキが釣れなかったから、東京湾にはスズキはいない。”

とても、強引な話で申し訳ありません。釣果とスズキの生態を、短絡的に結び付けていますが、合理性はありません。

インフルエンザ検査 陽性 であれば、インフルエンザの診断で、まず問題ありません。

しかし、簡易検査で陰性なら、インフルエンザではない・・・と確定はできません。インフルエンザ検査”陰性”の場合は、他の所見・情報も併せて検討していく必要があります。

 

検査陰性であっても、インフルエンザを否定したことにはならない

ここから、理屈っぽいお話になります。

検査の評価指標として、感度 と 特異度 があります。

”感度”とは、真性陽性になる確率:下表のA/(A+C)になります

”特異度”とは、真性陰性になる確率:下表の D/(B+D)になります

【表/罹患割合と検査結果】

感度、特異度 いずれも検査の信頼性を評価する大切な指標ですが、患者さんにとっては直接的なメリットにつながらない指標です。実際の検査の結果を評価するときは、陰性予測値や陽性予測値が重要となります。

今回は、陰性証明書の話ですから、陰性予測値を次項で紹介いたします。

 

いい加減さの定数化

 外来検査で陰性を認めた場合、その判断に際して、必要なのは”感度”でも ”特異度”でも ありません。

 発熱時の検査で、陰性だった場合、”インフルエンザの可能性はどのくらいあるのか”を知りたいわけです。

 要するに 前記・表の C/(C+D) あるいは D/(C+D) の値が、現実的には必要になります。

 C/(C+D) は、検査陰性にもかかわらずインフルエンザであった確率です。 D/(C+D) は、検査陰性で しかも インフルエンザではない確率です。

 通常は、D/(C+D) を利用し、陰性予測値と呼ばれています。

 陰性予測値とは、検査の感度・特異度から、病気ではない確立を推定するものです。

 たとえば 陰性予測値70%とは、10人の陰性者のうち、7名は病気ではないが、3名は検査陰性であっても病気であるという意味です。

 

実際に計算してみると・・・

【仮定】 

インフルエンザ流行期に38度以上の発熱が12時間持続した場合、インフルエンザの罹患率は70%と仮定します。(小児の場合、もう少し割合は高くなります。)

発熱12時間後のインフルエンザ簡易検査の 感度を80%、特異度を70%と仮定します。

母集団を1000人と想定して、罹患割合と検査結果の表を作成すると、下記になります。

【表/罹患割合と検査結果】

 

陰性予測値=(210)/(210 + 140) =0.6 

陰性予測値(陰性者で、本当にインフルエンザでない人の割合)は、60%となります。

10人に4人は、『検査陰性ですが、本当はインフルエンザ』であり、検査結果が間違っていたことになります。

【感度・特異度 検査試薬メーカー資料】

インフルエンザで38度以上が12時間経過した後、インフルエンザ簡易検査の感度は、75%~83%です。特異度は、62%~80%です。(メーカー側の資料より)

38度以上の発熱後、24時間以上経過すると 感度 特異度とも 95%以上となります。

【仮定から考えられる推論】

インフルエンザ流行期に38度以上の発熱が12時間持続した場合、インフルエンザ検査が陰性であっても、10人中4人は インフルエンザと考えられます。検査の陰性結果には、充分な信憑性がありません。

したがって、発熱12時間で行った”インフルエンザ簡易検査”では、検査結果自体に合理性がなく、”陰性証明書”は意義が乏しいこととなります。

 

【発熱後の時間により、検査の信頼性は変化します】

・発熱後 24時間以降の場合

38度以上の発熱を24時間以上認めた場合、検査感度は96~99%、特異度は93~97%に上昇します。感度・特異度を95%と仮定し、陰性予測値を計算すると 89% になります。この場合、陰性証明書はある程度有効なものと考えられます。

・発熱後 6時間以内の場合

発熱後6時間以内のインフルエンザ簡易検査の陰性所見は、合理的な判断根拠になりません。発症6時間以内にインフルエンザ検査を受けて陰性であっても、感染の有無の判断できませんので、再検査が必要です。

ふたばクリニック 広瀬久人 (2011.07.11)

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