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B型肝炎から家族を守る

海外出張・赴任時や、海外渡航時にB型肝炎接種が推奨されいます。最近では、お子様にB型肝炎ワクチン接種を希望されるケースも増えてきました。

逆に、B型肝炎を”性感染症”・”薬剤利用者感染症”と考えて、軽視している人たちもおられます。

世界では、B型肝炎ワクチンは、ユニバーサルワクチネーション(全員接種)と位置付けられています。

B型肝炎の感染経路と、そのお行儀の悪い実態を考えてまいります。

B型肝炎から家族を守る
  1. B型肝炎の原因ウイルス
  2. B型肝炎は、軽症例が多い
  3. B型肝炎ウイルスは、一生排除できない
  4. 行儀の悪いB型肝炎ウイルス
  5. 国際的に、B型肝炎は一般的な感染症の一つです
  6. どうしたらいいのか
1:B型肝炎の原因

B型肝炎は、同名のウイルス感染症です。

病原体:B型肝炎ウイルス(HBV)
タイプ: DNAウイルス
遺伝子型:G-type A~Hの8型に分類
直径42nm球形粒子(0.000042mm)

2:B型肝炎は、軽症例が多い

B型肝炎は、キャリア(保菌者)とよばれる感染者の体液から感染します。キャリアの”汗・涙・唾液・血液・粘液・精液”などの体液には、B型肝炎ウイルス(以後HBV)が含まれています。

この体液に接触することで、ウイルス粒子は皮膚・粘膜から侵入し、リンパ流・血流にのって肝臓に到達します。汚染された注射器の使いまわしや、性行為でも感染しますが、日常の接触でも、充分感染は可能です。

HBVに感染すると、1~6カ月の潜伏期の後、倦怠感と食欲不振・嘔気、発熱を認め、2~4カ月で改善します。B型肝炎は軽症例も多く、数ヶ月続く感冒のような体調不良のため、肝炎の意識が乏しい特徴があります。

しかし、感染急性期の1割程度は、黄疸を認める重症肝炎を発症します。

日本では、人口の2%がキャリアです。

また、B型肝炎の感染歴を示す抗体陽性者(HBs抗体陽性者)は、年齢とともに増加し、50歳代で20~30%台に達します。

3:B型肝炎ウイルスを、排除できない

HBVは、肝細胞の表面(細胞膜)に付着し、外側のカプセルを脱いで、DNA(遺伝子)だけを肝細胞の中に送り込みます。ウイルスDNAは自己複製を開始し、感染が成立します。

HBVが感染した肝細胞は、感染の目印を細胞表面に提示します。この目印細胞を免疫システム(リンパ球)が攻撃して肝炎が始まります。

免疫システムからの排除攻撃(肝炎)が始まると、ウイルスDNAは、cccDNA(covalently closed circular DNA)に形態を変化させて、潜伏状態に移行します。cccDNAに変化すると感染の目印が消え、リンパ球の攻撃・肝炎が終わります。

ただし、リンパ球を主体として免疫システムの炎症が終息するだけで、肝細胞・核内に侵入したウイルスDNAは排除されることはありません。

肝炎症状が鎮静化し、急性肝炎が治癒しても、肝細胞に潜むHBV-cccDNAは、一生共棲することになります。

【付記】
感染・初病期が経過したのち、キャリアの慢性化や、急性肝炎後のキャリア化など、その後の経過は多様ですので、詳細は他書をご参考下さい。いずれの場合も、HBV-cccDNAまたはHBV-DNAが排除されることはありません。

4:行儀の悪いB型肝炎ウイルス

前述のように、肝炎の炎症反応が終息して、HBe抗体が産生され(セロコンバージョン)、血液中のHBV-DNA量が検出されなくなっても・・・肝細胞の中には、HBV-cccDNAが残っています。

このHBV-cccDNAは、非常に行儀の悪い遺伝子です。ゴキブリの卵のように、肝細胞の核の中で一見おとなしく潜んでいますが、実は暗躍の機会をうかがっております。

ホスト(患者)の免疫システムに支障が生じた場合・・・たとえば免疫抑制剤を使用したり、特定のウイルス感染を合併した場合・・・cccDNAが病原性を持つウイルス遺伝子へと変異し、ウイルスDNAの複製を再開します。

さらに、cccDNAの悪戯が続くと、肝がんの発症など、致死的な肝疾患へと進展していきます。

5:国際的に、B型肝炎は一般的な感染症の一つです

下の図は、2006年における世界各国のHBs抗原陽性者(キャリア)の分布です。

出典:アメリカCDC:旅行医学

Map 3-04. Prevalence of chronic infection with hepatitis B virus, 2006

http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2012/chapter-3-infectious-diseases-related-to-travel/hepatitis-b/south-sandwich-islands.htm

Map 3-4 Prevalence of chronic infection with hepatitis B virus, 2006

(上記のマップをクリックすると、拡大画像にリンクします)

濃い色の部分は、HBs抗原陽性者(キャリア)が8%以上の国です。

抗原が陽性ということは感染力があるということです。人口割合の8%以上が、B型肝炎の感染源ということです。

HBVは、汗や涙でも感染しますので、通常の日常生活で罹患します。さらに、軽症例では感冒のような症状が数カ月続くだけなので、本人も気づかないまま感染源になってしまいます。この急性期の数カ月に、HBVが伝染して家族内や幼稚園/保育園・学校・職場内での集団発生が報告されています。

6:どうしたらいいのか

以前、エイズ(AIDS/HIV)抗体陽性のお子様に看護士がキスをしている映像が放映されたことがあります。これはエイズの伝染力があまり高くないことを広報するパフォーマンスです。しかし、HBVキャリアに同様の行為をおこなうことは、極めてリスクの高い行為です。

幼稚園/保育園や学校など、子供同士が触れあう場所では、キャリアからの感染は防ぐことはできません。しかし、キャリア児を特別扱いすること・・・されることは、きわめて問題の多い対応です。

どうしたらよいのでしょうか?

WHOは、ユニバーサルワクチネーション(全員接種)として、生まれた子ども全員にB型肝炎ワクチン接種を推奨しました。生後から、HBVに対して感染免疫を持っていれば、キャリアになることも、HBV感染におびえることも無くなります。

日本では、セレクティブワクチネーション(選択的接種)として、母子感染が疑える場合のみ、B型肝炎ワクチン接種が保険適応になっています。母子感染(垂直感染)をブロックすれば、日本のB型肝炎は理論的(?)に排除できるとの立場のようですが、現在の問題点は水平感染が急増していることです。理論的に、個別接種でB型肝炎は排除できません。

韓国・中国ではB型肝炎のユニバーサルワクチネーションが始まっています。B型肝炎を、”長く続く感冒”のような病気ととらえて、過小評価している日本の実態が一番の問題です。

ふたばクリニック 広瀬久人(2012.06.28)