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牛・豚肉アレルギー/α-galアレルギー(Alpha-gal Allergy)

α-galアレルギーとは、最近になって注目されるようになった食物アレルギーです。(2009年報告:Dr. Thomas Platts-Mills & Dr. Scott Commins)
この疾患は、牛・豚肉に対するメニュー抗原除去が必要になるため、日常生活に負担の多いアレルギーです。

α-galアレルギー(Alpha-Gal Allergy)
α-galとは(ガラクトース-α-1・3-ガラクトース)

α-gal(アルファ ガル)は、オリゴ糖の1種です。

2つの”ガラクトース”が、1-3位でアルファー結合しています。
2糖類として、単独で生体内に存在するわけではありません。
糖蛋白などの側鎖として認められます。

霊長類以外の哺乳類は、α-galを側鎖に持つ糖タンパクを合成可能です。

ヒトを含む霊長類は、α-gal側鎖を持つ糖蛋白を認めません。

チキンやターキーなどの鳥類や、魚類にも含まれておりません。

α-galアレルギー

α-galに感作された人が 牛肉や豚肉を食べると、数時間(3~8時間)後にアレルギーが起こります。
発症に時間がかかるため、肉メニューが原因と気付きにくいアレルギーです。

臨床症状は、嘔気・下痢・腹痛などの消化器症状と蕁麻疹です。

重症例では、アナフィラキシーショックを起こしてきます。
また、α-galを含む治療薬を点滴した場合も、アナフィラキシーショックを起こしてきます。

α-galに対する免疫抗体検査は、特殊検査であり、専門医療機関でないと対応できません。
通常の特異的IgE検査(ウシ・ブタ)で陽性反応を認めた場合は、α-gal抗体陽性を疑いますが、確定はできません。
(ウシ・ブタ特異的IgE 抗体陽性者に、抗α-gal・IgE陽性者が多いとの報告もあります)

セツキシマブという注射薬との関係

セツキシマブという抗腫瘍製剤があります。

主成分であるモノクロナール抗体Fab領域の糖鎖にα-galを認めており、セツキシマブを注射した後にアレルギー反応を起こす症例が見つかりました。重症例では、初回投与後にアナフィラキシーショックを起こしています。

セツキシマブのアナフィラキシー・アレルギーは、最初アメリカで問題になりました。

セツキシマブに対するアレルギー症例を調査していくうちに、地域的に偏在することや、ダニ刺傷・ビーフ不耐症の既往を持つ特徴を認めました。
このアレルギーの地域的な偏在が、あるマダニの生息地域に重複する可能性が指摘され、ダニ刺傷がα-galアレルギーを誘発することが推測されました。
その後、オーストラリアやヨーロッパでも、ダニ刺傷によるα-galアレルギー症例の報告があります。
本邦でもα-galアレルギー者のビーフ不耐症・獣肉アレルギーが報告されています。


注:セツキシマブ:抗悪性腫瘍製剤(モノクロナール抗体製剤)
2003年12月スイスで認可(世界初)
2004年02月米国食品医薬品局 (FDA)承認
2004年06月欧州医薬品局 (EMEA)の認可
2008年07月厚生労働省承認

ダニ刺傷によるα-gal感作

ある種のダニ腸管内にα-galが存在することがわかっています。
ある種のダニ刺傷時にα-galを含む糖蛋白が皮内に注入されるため、感作されると考えられています。

α-gal感作を引き起こすダニは、マダニの仲間です。
屋内に通常生息するイエダニ、コナダニは、原因とはなりません。
屋外の環境下で人に寄生・吸血するマダニの一部が、α-galアレルギーを起こしやすいと考えられています。

注意:イエダニ、コナダニは、一般的にヒトを吸血することはありません。

獣肉が危ない

α-galは、霊長類以外の哺乳動物に、遍く存在しています。
牛豚肉だけではなく、他の獣肉でもアレルギーを起こしてきます。
ヒツジ、ヤギ、ウマ、シカ、海獣、イヌ、ネコなど獣肉であれば、同等のリスクを有しています。
α-galの感作後は、獣肉に対して禁食対応が必要となります。


注意1:鳥類、爬虫類、魚類、両生類に関しては、筋肉にα-galを認めないため、このアレルギーとは無関係です。

注意2:一部の魚卵(カレイ)に、α-GALと交差免疫性が報告されています。

ふたばクリニック 広瀬久人(2014.08.15)