トップ コラム 健診・検査 予防接種 自費処方

ふたばクリニック HomePage > コラム 
> 下痢性貝毒

下痢性貝毒

原因

貝を食べて、下痢をおこすことがあります。
特に、早春から夏にかけて下痢性貝毒と呼ばれる食中毒を認めることがあります。

原因となる化学物質(自然毒)は、オカダ酸およびその同族体であるジノフィシストキシン群です。
ジノフィシストキシン群は、一部のプランクトンが産生します。

ご注意:麻痺性貝毒に関しては、こちらをご参照ください。

下痢性貝毒:ジノフィシストキシン群

ジノフィシストキシン群を産生するプランクトンが、特定海域で増殖すると、捕食者である貝類が汚染されます。
汚染された貝を摂食すると、食後約30分で下痢・嘔吐・腹痛を認めます。消化器症状が3日程度持続し、自然軽快していきます。昭和のころは、原因不明の下痢症候群として扱われてきました。
1970年代(昭和50年代)になり、ジノフィシストキシン群の検査方法が確立されるようになりました。
『海域中の有毒プランクトンの監視』・『出荷貝類の毒性値の計測』が可能になったため、市販されている貝によるジノフィシストキシン性下痢症は、ほとんど見られなくなりました。

ジノフィシストキシン群は、加熱に耐性があり、充分に火を通しても、毒性は変わりありません。わさびなどの調味料による解毒もありません。(わさびを付けても、毒性は維持されます)

他の胃腸炎との違い

貝毒による下痢は、自然毒(化学物質)が消化管障害を起こす『自然毒食中毒』です。
ノロウイルスは、病原体が腸管に感染・侵襲する『感染型食中毒』です。
病原性大腸菌O-157は、病原体が消化管に感染し、感染巣で産生する毒素が炎症を起こす『毒素型食中毒』です。

感染型、毒素型の食中毒は、生きている病原体が腸管内で繁殖した後に、消化器症状を認めます。
貝毒・自然毒による食中毒は、料理に毒素が含まれているため、食後30分という短時間で消化器症状を発症します。

管理された(検査を受けた)海岸では、貝毒の可能性はほとんどありません。漁協などが管理している潮干狩りは、問題ありません。
管理されていない海岸で、貝類を採取した場合、リスクが否定できません。アウトドア体験など、自然界から取り込んだ食材を利用する場合は、充分ご注意ください。

参考/厚生労働省・自然毒のリスクプロファイル:二枚貝:下痢性貝毒
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_10.html

2020.03.21 広瀬久人